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今回は兵庫県は神戸市東灘区魚崎南町にある櫻正宗株式会社さんが造った日本酒(ブランド?)"灘の生一本"の生酒を頂きます。 元々この"灘の生一本"は、灘五郷一帯の酒造技術者さん達が立ち上げた(1917年)灘酒研究会の酒質審査委員会が認定した灘酒プロジェクトで、灘五郷9蔵が販売している"灘の生一本"シリーズのお酒であり、今回頂くのが櫻正宗株式会社さんが出しているものなので厳密に云うと企画商品になるのかな。 で、更にこれはそいつをタンクから直接酌んで来た生(タンク前火入れ)原酒を店頭で瓶詰めした、所謂店頭生づめバージョンであります。あ、一応数量限定販売となってます。 因みに瓶には180mlと300mlの2種類ありますが、今回は300mlのaiちゃんの好みのピンク色にしました。 先日、久しぶりに神戸に行く用事が出来、午後はフリーになりましたのでaiちゃんを呼び出して灘五郷の御影郷("福寿"、"大黒正宗"、"泉正宗"、"菊正宗"、"白鶴")と魚崎郷("浜福鶴"、"櫻正宗")の計7蔵を飲み歩く聖地巡礼"へべれけ"コースで日本酒を満喫した時の戦利品・・・、と思います(こちらの蔵が最後でしたので余り記憶が・・・)。 因みにこちらの蔵に併設されております呑処"三杯屋"で"閉め"を致しましたが、そのレポートは又別の機会と云う事で・・・。 こちらの櫻正宗株式会社さんの処のネタ(失礼!)は山程ありますが、今回は生一本を取り上げます。 生一本とは簡単に云うと「純粋で混じり気のない事」であり、お酒の世界では「日本酒の価値をより高める修飾語のひとつ」とされ、酒造りの上では「全て自分の蔵で造った純米酒」と云う事になるでしょうか。 も少し難しく云うと、現在生一本と表示出来るのは国税庁が平成元年に定めた清酒の製法品質表示基準において「単一の製造場のみで醸造した純米酒である場合」と定義されております。 この「単一の製造場のみで醸造した」の「単一の製造場」とは、あくまでも酒税法上、1つの製造場として取り扱われる製造場の事を意味する・・・らしいです。 これは例えば2つ以上の製造場を持つ製造者が例えそれが同じ蔵名であってもそれぞれ別の製造場で造った純米酒を混ぜたお酒は生一本の表示が出来ないと云う事らしいです。(勿論、他所が造ったお酒を買って来てそれを混ぜるのはダメです) 酒税法上、1つの製造場として取り扱われる製造場と云うのが引っかかりますがそれはさておき、普通に考えると販売されているお酒はその蔵が全て造ったものと思われており(実際、今では殆どの酒蔵が他所から購入したお酒を混ぜて販売する事はしなくなりました)のでわざわざ生一本と云う表記をするメリットはあまり無くなってしまった様でしたが、最近では逆にしっかり造られた日本酒の価値を高める為に生一本の表記を使う処も多くなり、この灘酒研究会の"灘の生一本"シリーズ等の販売に繋がっていったのでしょうね。 最もこの"灘の生一本"シリーズも実際は各蔵が色々と新しくチャレンジしたお酒をラインナップに上げておられますので(美味しいお酒には違いありませんが)本当の意味で各蔵の昔ながらの個性が出た生一本とは少々異なる路線になってはいるのですが・・・。 ついでに云うと灘の生一本と云う言葉は「灘で生まれ育った生粋の混じりけのない原酒」と云う意味で、現在では「灘五郷の単一の製造場のみで醸造した純米酒」を灘の生一本と呼ぶ様になっているそうな、めでたし、めでたし。 と云う事で、櫻正宗の"灘の生一本"(生)頂きます。 グラスを近づけるとほのかな香り。そして一口飲むと一瞬のまろやかさと同時に、別の処では口の中を刺激する酸味?がやって来ますが、この酸味、いささか元気すぎて何かワイルドな感じが致します。勿論生(詰)の原酒なのでアルコールのパンチ力の影響も確かにありますが・・・。 それから最後にあの「山田錦」のコクがばっちり来ます。 しっかりした造りで美味しいお酒ではありますが、全体としてはそれぞれの味が主張し少々統一感が・・・。特にこのワイルドな酸味の為、辛口の酒の様な印象ですがこれは単体で飲んだ時。 ならばと肴を頂きながら飲んで見るとあら不思議、そのワイルドな酸味が程よいまろやかさに包まれ何ともいえない上品な酸味へと変化致したのでした。 もっと云いますと、口に含んだ瞬間、先ず程よいまろやかさが口の中に広がり、そしてその中で良い感じに整えられた酸味がやって来ます。その整えられた酸味によって更にまろやかさが強調され、それが穏やに「山田錦」のコクに繋がっていくと云う綺麗な味の曲線ラインを描くのです。 成る程、食中酒にするとそれぞれの味が滑らかに繋がり、全体がいいバランスで纏まるじゃあないですか。櫻正宗の"灘の生一本"(生)ってこう云うお酒だったのですね。 晩酌をしながらそのカラクリ、その美味しさに唸っておりました。 次回は通常バージョンの"灘の生一本"も飲んで見たいものであります。やっぱり味が違うんでしょうね。 「金の要らん只の酒があるっちゅうて来ましたんでっけど、一杯飲ましておくんなはれ。」 「入って来るなりなんちゅう言い草や、それを云うなら灘の酒(生一本)の事と違うんかい。」 「そうでっかいな。まあ、そんな事はどうでもええから、早う飲まして、今直ぐ飲まして。」 3代目桂米朝の持ちネタでもある、お馴染み落語は「子ほめ」の出だしの一説でした。 使用カメラiPhone6s、2017.10.19、aiちゃん撮影。 |
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